まちがいやすい!固定残業代の適正な計算方法を徹底解説!
労働基準法には、固定残業代の適正な支払いについてのルールが定められています。しかし、企業によってはこれらのルールに違反してしまっているケースも少なくありません。本記事では、特にまちがいの多い固定残業代の計算方法について、正しい考え方とトラブルを避けるためのポイントについて解説します。
労働基準法に基づく固定残業代の支払いとは
固定残業代とは、残業をしたかどうかにかかわらず、毎月定額で支払われる残業代のことです。例えば、30時間分の固定残業代が設定されている場合、残業を全くしなかった月と残業を30時間した月で給与の額は変わりません。
ただし、30時間以上の残業をした場合には、30時間を超えた部分について追加で残業代を支払う必要があります。また、固定残業代の設定は、労働基準法の規制をふまえて、1年単位の変形労働時間制を採用している事業場は、月26時間40分以内、それ以外の事業所は月30時間以内にしておきましょう。
なお、固定残業代を設定する場合、募集要項や求人票へ正しく表示されておらず、トラブルが発生している事例もあるため、適切な表示を心がける必要があります。
適切な固定残業代の計算方法
今回は、基本給を基に固定残業代を計算し、それを基本給にプラスして支払うときの計算方法をご紹介します。
時給に基づく計算方法
時給に基づいて固定残業代を算出する場合の計算式は以下の通りです。
時給×固定残業時間×割増率=固定残業代
例えば、時給1000円で、固定残業時間30時間、割増率1.25で設定する場合、以下のような計算式となり、固定残業代は37500円となります。
1000円×30時間×1.25=37500円
なお、割増率は、時間外手当、休日手当、深夜手当のそれぞれで最低限度が以下のように定められています。
種類 | 支払う条件 | 割増率 |
---|---|---|
時間外手当 | 法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えたとき | 25%以上 |
時間外労働が限度時間(1か月45時間、1年360時間など)を超えたとき | 25%以上(努力義務) | |
時間外労働が1か月60時間を超えたとき | 50%以上 | |
休日手当 | 法定休日(週1日)に勤務させたとき | 35%以上 |
深夜手当 | 22時〜5時までの間に勤務させたとき | 25%以上 |
固定残業代が、どの種類の手当に該当するのかは各企業の規定によります。それに応じて、割増率が最低限度を満たすように設定しましょう。
月給制・年俸制の場合の計算方法
月給制や年俸制の場合で、固定残業代を算出するには、月給や年俸を時給に換算してから計算します。
〔月給制〕
月給÷月平均所定労働時間
〔年俸制〕
年俸÷12か月÷月平均所定労働時間
なお、月平均所定労働時間は以下の計算式で求めます。
(365日-1年間の休日日数)×1日の所定労働時間÷12か月
労働時間の端数がある場合の処理方法
月給や年俸から固定残業代を計算する際は、月平均所定労働時間を算出しますが、このときに端数が出ることがあります。
この端数をどう処理するのかは特に定められていませんが、労働者が不利にならないように切り捨てるのが一般的です。
例えば、計算結果が「170.666…」となった場合には、「170」や「170.6」とします。
まとめ
残業をしたかどうかにかかわらず、毎月定額で支払われる固定残業代は、「時給×固定残業時間×割増率」で算出できます。
月給制や年俸制の場合で、月平均所定労働時間を算出するときには、端数を切り捨てることに注意します。
このように、月給制や年俸制の労働者に対しても、適切な計算方法を用いて、公正な労働条件を明示するようにしましょう。
企業経営者・人事労務担当者は、固定残業代に関する理解を深め、法令違反や労働者とのトラブルを未然に防ぐことが必要です。
社労士をお探しの方はご相談ください!
固定残業代を取り入れる場合には、時間外手当のみが対象なのか、休日手当や深夜手当も含むのかなどを、就業規則で明確に規定する必要があります。
また、この規定によって、固定残業代の計算方法も異なってくるため注意が必要です。
固定残業代は便利な方法ですが、きちんと運用しなければトラブルのもとになるため、少しでも不安がある場合には社労士に相談するようにしましょう。
弊社では、就業規則の作成から給与計算まで、経験豊富なスタッフがサポートいたします。
愛知県一宮市で社労士をお探しの場合には、ぜひ一度ご相談ください。