【福祉業/75名】年次有給休暇の「計画的付与」を廃止し、柔軟な運用へ方針転換した福祉施設の事例
はじめに
年次有給休暇の取得義務化により、多くの企業で「計画的付与」の導入が進んでいますが、業種や勤務形態によっては運用が難しいケースもあります。本記事では、福祉施設を運営する企業が直面した課題と、それに対して社労士事務所が提案・支援した対応策をご紹介します。
現状の労務の課題
有休の運用に関する判断に悩む 対象となったのは、福祉施設を運営する従業員75名規模の法人様。 グループホーム部門(365日稼働)とM&Aによりキャリア支援部門(公休日固定)を有しており、キャリア支援部門では、以前より年次有給休暇の計画的付与を実施していました。しかしながら、現場からは「個人の事情に合わない」「一斉付与による対応負担が大きい」「会社間で差があるのはおかしい」などの声が上がっており、今後の運用をどうすべきか検討されていました。
社労士事務所からの提案内容
メリット・デメリットを整理し、最適な運用を助言 社労士事務所からは、以下のように計画的付与のメリット・デメリットを整理した上で、企業の実情に即した判断を提案しました。
◆計画的付与のメリット
有休取得率の向上と管理のしやすさ(特に5日取得義務の確実な達成) 閑散期に合わせた取得で業務の平準化が可能 所定労働日数が増えることで、時給換算の人件費単価が下がる
◆計画的付与のデメリット
一斉付与時、有休残がない社員に対しては休業手当の支払等が必要 個別の希望に対応しにくく、柔軟性に欠ける また、計画的付与の変更・廃止には労使協定の合意が必要であることを明確に伝えた上で、部門ごとの働き方に合った対応方針を検討するよう助言しました。
解決後の結果
部門特性に応じて柔軟な有休運用へ 提案を受けて企業では、年次有給休暇の計画的付与を廃止する方針を決定。 グループホーム部門は365日体制であることから一斉休暇が難しく、キャリア支援部門ではもともと公休日が固定されているため、2社とも有休は個別に自由取得とし、2部門で年間休日日数を統一する形で調整しました。 この結果、社員ごとの都合に合わせた柔軟な有休取得が可能となり、従業員満足度や現場の運用負荷も軽減されました。
本件のポイント 年次有給休暇の計画的付与に関するメリット・デメリットを丁寧に整理 各部門の業態に応じた柔軟な運用方針の提案 労使合意に基づいた適切な制度変更を実施 誰にでもわかりやすい説明で、企業内の理解と納得感を確保
まとめ
年次有給休暇の計画的付与は、有休取得率向上や業務の平準化といったメリットがある一方、業態によってはデメリットが顕著になることもあります。本事例のように、業務形態や従業員の勤務状況を丁寧に分析し、制度の見直しや廃止を適切に進めることで、企業全体の労務管理の質を高めることが可能です。